東京高等裁判所 昭和40年(ネ)1376号 判決 1965年12月27日
控訴人 吉元成
被控訴人 国
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は、控訴人の負担とする。
事実
控訴人訴訟代理人は、「原判決を取消す。被控訴人は控訴人に対し、金二百三十円の支払をせよ。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人訴訟代理人は、控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の事実上および法律上の主張は、原判決の事実の部に書いてあるところと同じである。
理由
控訴人の主張によると、控訴人はその主張の民事訴訟事件における証拠の申出および期日延期の申立についてそれぞれその主張の印紙を貼用した、というのである。ところで、証拠の申出について当事者が所定の印紙を貼用すべきことは、民事訴訟用印紙法第六条ノ三第三号により明らかである。いわゆる期日延期の申立については多少の疑問がないわけではないが、期日延期の申立は、期日開始後何らの訴訟行為をすることなく期日を終了して新期日を指定されんことを求める申立であり、これについては同法第六条の二第一号により所定の印紙の貼用を必要とするものと解するのが相当である(期日変更の申立は新期日指定の申立を含み、当事者がその申立権をもつものであり、それ故に、この申立には右法条により印紙を貼用すべきものであることは、疑いがなかろう。ほかの点に差異があるにかかわらず、この、新期日の指定の申立を含み、当事者が申立権をもつという点においては、期日延期の申立も期日変更の申立と性質を同じくする、とみるのが相当である。したがつて、期日延期の申立には前記法条により所定の印紙の貼用を必要とするとすべきである。)。してみると、控訴人がその主張の申出および申立につきその主張の印紙を貼用したことは、訴訟当事者として極めて当然のことというべきである。そして、印紙の貼用が訴訟当事者の申出、申立を有効ならしめるための要件であり、その申出、申立が裁判所によつて採用されると否とにかかわりのないものであることは、同法第十一条の規定によつても明らかなところである。したがつて、控訴人がその主張の各印紙を貼用したことは、裁判所が違法に手数料を徴収したことにはならないから、以上と異なる見解に基づく控訴人の本件請求は、失当として棄却すべきである。
右と同趣旨の原判決は相当であるから、民事訴訟法第三百八十四条、第九十五条、第八十九条にしたがい、主文のとおり判決する。
(裁判官 新村義広 市川四郎 中田秀慧)